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理想郷の作り方ーー紫色のクオリア

『紫色のクオリア』の魅力は、量子力学や最新の哲学的問題を取り入れて、主体の選択の意義を問うた所にあると思うのだけれど、今回は個人的に印象に残った、運命改変の主体はだれであるべきか、という点について少し書いてみる。

他者の運命に介入しようとしても、どうしても運命を改変できず、運命改変の主体をその本人に限定することで、可能性として想起できなかった真の理想にたどり着くというプロセス。これもまたこの作品に描かれている部分のうちの一つであると思う。このプロセスは理想は創造するものである、というような、実業家的なあり方とはなじまない。他者の思考形成への関与、ダールでいうところの三次元的権力の行使は、組織の維持にどうしても必要なものである(もしそこに自己の理想を現実化する気概があるならば)。

『紫色のクオリア』の「if」では、真の理想の獲得、という形、大団円がとられているのだが、あくまでこれが「if」であることからもわかるとおり、そうならない(運命改変主体を他者に委ねたときに、許容可能なレベルの理想が実現できない)可能性が、現実的には大きい。それを打破するためにはどうすればよいのか。

一つ手段としてとれるのは、自己の理想を実現するコミュニティにおいて、その構成員を自己の判断基準にある程度の相同性を認めるものに限定することが上げられる。似たもの同士のコミュニティが長く続くのはそのためとも言える。

没個性化はだいたい揶揄の言葉として使われるけれど、案外歓迎すべきことなのかもね、快楽主義者にとっては。
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